"絆" KIZUNA プロジェクト 2015 報告


 
"絆 "KIZUNA プロジェクト 2015
~持続可能で平和な社会のための” ひとのネットワーク” 作りをめざして~
 
Peace Field Japan は、2015年も8月に、"絆" KIZUNA プロジェクトを行いました。三地域の参加者が、持続可能な社会のモデルである里山で共に生活し、地域の人が育んできた暮らし、文化、伝統にふれる体験を共有することで、お互いを受け入れ、絆を築くと共に、持続可能で平和な社会を作るために何ができるのかを一緒に考える場を提供しました。
 

プログラム概要

1)参加者:
イスラエルの高校生女子4名、指導者1名
パレスチナ(西岸)の高校生女子4名、指導者1名
日本の19才の女子4名

2)開催地:山梨県北杜市、小菅村、東京都内

3)
●期 間: 8月9日 ~ 23日
●場 所: 山梨県北杜市、小菅村、東京都内
●参加者 : イスラエル、日本、パレスチナの中高校生、大学生女子各4人( 計12人)
●主 催: 特定非営利活動法人 Peace Field Japan
●助 成: 一般社団法人東京倶楽部、公益財団法人三菱UFJ 国際財団
●協 力: 公益財団法人キープ協会
●後 援: 外務省、文部科学省、独立行政法人国際協力機構、イスラエル大使館、パレスチナ常駐総代表部、小菅村役場、小菅村教育委員会
●協 賛: 一般社団法人環境マテリアル推進協議会、横浜南ロータリークラブ、川崎中原ロータリークラブ、川崎幸ロータリークラブ、横浜旭ロータリークラブ、(有) アオキエアコンディショニング、津田眼科クリニック、ネタフィムジャパン株式会社

●ご寄付(KIZUNA サポーター): 野渡和義さん、水谷透さん、小山稀世さん、藤井謙一さん、大野功統さん、長谷川成人、田中麻紀さん、太田和代さん、野中茂さん、吉田修一郎、明日山俊秀、颯田裕彦、桜井裕子さん、山崎徳夫さん、矢田重明さん

4)日 程:
8月09日(日) 成田着、自己紹介、オリエンテーションを実施
8月10日(月) 聖ヨハネ幼稚園を訪問、キープ協会にて、アイスブレーク
8月11日(火) 小菅村着、オリエンテーション、共同生活のルール作りの後、茶道体験
8月12日(水) 学生ボランティアスタッフによる里山講座と小菅講座、そばの種をまき
8月13日(木) 源流体験、和食作り体験
8月14日(金) 下水処理場、林業廃棄物センターを見学、ハートコミュニケーション講座
8月15日(土) 草履作り、そばうち、そばせんの作成
8月16日(日) 奈良倉山登山、マスの串刺し作成、夏祭り参加
8月17日(月) 小菅村の子どもたちとの交流
8月18日(火) プログラムでの学びのまとめと行動計画作り、ホームステイ
8月19日(水) 横浜南ロータリークラブのみなさんと流しそうめん、スイカ割り、寺子屋コンサート。
8月20日(木) プログラムでの学びのまとめと行動計画作り、シェアリング
8月21日(金)   お礼の会(中東料理、踊り)
8月22日(土) 東京に戻り、フェアウェルパーティー
8月23日(日) 両国の参加者、帰国

プログラム内容

 

8月9日(日)

イスラエル、パレスチナからの参加者が成田空港に到着。バスで清里に向けて出発。途中都内で日本の参加者とスタッフが合流し、清里高原のキープ協会に到着しました。オリエンテーションの後、森の中を歩き、リフレッシュしました。

8月10日(月)

午前中、聖ヨハネ幼稚園を訪問して園児たちと交流しました。森の中を歩きながら、元気いっぱいの園児たちと触れ合い、3 地域の子どもの歌を披露しました。言葉が通じない子どもたちと向き合うことで、コミュニケーションの意味に気づくことができました。
 
午後は、キープ協会の創設者であるポール・ラッシュ氏が、日本人の仲間と信頼を築き、困難を乗り越えてその人生の中で達成した偉業について、ピース・プラクティショナーのローラさんから講義を受けました。参加者たちは、ラッシュ氏が示した” 人と人との交流の大切さ” を学びとったようです。ポール・ラッシュ記念館を訪問した後、石川さんによるアイスブレーク・プログラムで盛り上がりました。森を歩き、笹舟を作ったり、ヤマネの生態について説明を受けたりしました。森は様々な木が共生しているところだというメッセージは、参加者の心に響きました。とってきた葉っぱをスタンプにし、それぞれがバンダナを作りました。夜は、プログラム中のコミュニケーションの基本となる、ハート・コミュニケーションの講義を行いました。「Love,Respect, Compassion」がプログラムを通しての一貫したアプローチとなりました。

8月11日(火)

いよいよ小菅村へ。寺子屋自然塾に到着すると、前日から準備に入っていたたくさんのボランティアスタッフに迎えられました。オリエンテーション、共同生活のルール作りの後、茶道体験。スタッフが浴衣を着てお手前を披露しました。茶道の作法や意味、茶道の心である、” 一期一会” について説明を受け、人と人がその瞬間、空間を共有することの意味を感じました。” 一期一会” は、プログラムを通してのキーワードとなりました。

8月12日(水)

小菅村滞在中毎朝ラジオ体操を行いました。午前中は、スタッフによる里山講座と小菅講座。里山の雰囲気を感じられるようにと、ボランティアスタッフが作成した大きな背景が設営された中で行われ、参加者も熱心に聞いていました。日本の里山は持続可能なコミュニティのモデルであり、自然と人が共存し、自然の恵みで人の暮らしが成り立っていたこと、里山の様々な機能と価値、社会の変化による里山の荒廃の危機について学びました。背景を変えた小菅講座では、小菅村の魅力と里山の変化による様々な課題の具体例を学びました。また、木の活用の一例として、スタッフが作ったロケットストーブでマシュマロを焼いて食べました。

午後は、オリエンテーリング方式の長作集落ウォークラリーで、グループにわかれて渡された地図を頼りにいくつかのポイントをまわりました。待機していたボランティアスタッフが、午前中の里山講座の内容をもとにした質問をし、ポイントを競うもの。参加者たちは、グループで相談しながら答えを見つけ、集落を駆け抜けていました。そして、毎年お世話になっている守重敏夫さん、広子さんご夫婦の畑でそばの種をまきました。鍬で畝を作り、元気に芽が出るように大切に種をまき、土をかぶせる、という畑作業です。まいたそばは、2014年の参加者が蒔いてボランティアスタッが収穫したものです。秋に日本人参加者とボランティアスタッフが収穫し、2016年の参加者につなぎます。とりたての野菜もその場でいただき、心をこめて、畑で野菜を作っていらっしゃる守重さんの思いにふれました。

8月13日(木)

午前中は源流体験。NPO 法人多摩源流こすげの鈴木さんと寺田さんに案内していただき、多摩川の源流を歩きました。この日はあいにくの曇り空。水も冷たく、最後には雨も降り出しましたが、中東とは違う日本の自然を感じ、急な流れの場所では、お互いに手を差し伸べながら、助け合ってゴールの滝まで行くことができました。最初は躊躇していましたが、仲間の声援のもと、ほぼ全員が大きな岩から淵に飛び込みました。豊かな森があってこそのきれいな水であること、自然の大切さを学びました。夕食は、和食作り体験。和食で大事な”うまみ” について学んだあと、鰹節と昆布からの出汁の取り方を学び、鶏の照り焼き、卵焼き、野菜のゴマ和え、酢の物、すまし汁を作りました。

8月14日(金)

多摩川源流の村である小菅村の自然を守る取り組みについて学ぶ一日でした。小菅村役場の中川さんの案内で、まず、企業が森の手入れに協力している森へ。手入れのいき届いた森とそうでない森を見ながら、森の手入れの仕方、高齢化で森の手入れが難しいこと、東京からボランティアが間伐の手伝いに来ていることなどの説明を受け、森の管理の大切さを学びました。小菅養魚場では、きれいな水があることで成り立っているヤマメやマスの養殖について説明を受け、使った水をきれいにしてから川にもどしていることを聞きました。また、春に完成した村の新庁舎では、木を使い、環境配慮があちこちに施されていることなどの説明を受けました。上流の村の責任として、下水を処理してから川にもどしている下水処理場、村の全家庭から生ゴミを回収して堆肥にしている林業廃棄物センターも見学しました。実際に、各戸から回収してきた生ゴミとおが粉をフォークリフトでかくはん機に入れる作業、導入したばかりの機械で熱を加える作業、できた堆肥の袋詰め作業など、それぞれの行程について詳しく説明していただきました。
 
堆肥になるまでの作業を一人で担当されていることに参加者は驚き、そのことによって、自分たちの気づいていないところで、様々な人たちの努力があることに気づき、参加者たちの姿勢が変わっていきました。最後は守重さんの森で間伐体験を行い、のこぎりに四苦八苦しながらも、協力してヒノキの木を切り倒しました。切ったばかりのヒノキの香りと、しっとりした切り口に驚いていました。小菅村の人たちの、自然を守る取り組みの現場を見ることができ、参加者にとって貴重な学びの場となりました。

また、夕食後、参加者たちが、ボランティアスタッフに、ハートコミュニケーション講座を行いました。協力しあいながらの講義ぶりは、「Love、Respect、Compassion」を心にとめていることを証明していました。

8月15日(土)

午前中は布草履作りを体験しました。草履作りという伝統の技を現代のリサイクルとあわせたアクティビティで、それぞれが古くなって不要になったT シャツを持って来て、それを割いて草履を編みました。集落の方々に教えていただきながら、なんとか片方の草履を仕上げました。午後は、そばせん作り体験でした。型にそば粉をもとにした種を入れて、回しながら焼く作業です。寺子屋の焼き印を押し、そのおいしさに舌鼓をうちました。思い思いに折り紙などでデコレーションをつけたパッケージに入れ、お土産にしました。

8月16日(日)

守重さんと守屋さんの案内で恒例の標高1349m の奈良倉山登山です。途中、ばてた参加者もいましたが、励ましあって、全員が元気に頂上まで登りきることができました。中東では味わえない自然を満喫しました。予定した時間よりも早く下山。塩焼きにするために、大騒ぎをしながらマスを串刺しにした後、浴衣を着て夏祭り。集落の方が用意してくださった、地元の食材を使っての郷土食やマスの塩焼きをおいしくいただき、スタッフによる出し物を楽しみました。

8月17日(月)

新聞紙で折り紙の技を使って紙袋を作りました。イスラエルとパレスチナでは、レジ袋のゴミが大きな問題になっているので、戻ったら、まわりの人たちに教えたい、と張り切っていました。
 
午後は、全校生徒の登校日となった小菅中学校を訪問させていただきました。春にオーストラリアの修学旅行で日本と小菅についての発表を行った中3の生徒のみなさんが、英語で発表してくれ、盆踊りも教えてもらいました。小学生も到着、イスラエルとパレスチナのゲームや、英語を使ってのゲームを楽しみました。その後、イスラエルとパレスチナの参加者たちは、校長先生の案内で校内見学。日本の学校では生徒が掃除すること、給食があること、音楽室に並んだ日本の楽器などに驚いていました。その間、PFJ の学生ボランティアスタッフが、中学生に、ボランティアで活動に関わっている意義などについて話しました。

8月18日(火)

午前中、参加者たちが、自分が見いだしたことをシェアした後、それぞれが、プログラム中にどう自分が成長できたかを表現するために、集落をまわって写真を撮りました。それぞれが、それぞれに思いをこめました。撮影した後、何を撮影し、どんな意味があるのかをシェアしました。この時に撮った写真は、コラージュにして、プログラム終了後、ソーシャルネットワークを利用したグループページで共有しています。その後、これまでの毎年参加者が種をまき、ボランティアスタッフが収穫してつながってきたそばを石臼で挽き、集落の方々に教えていただきながらそば打ちを体験しました。昼食は自ら打ったそばと小菅村でとれた野菜の天ぷらでした。自ら打ったそばの味は忘れられないものになったようです。
 夕方からホームステイへ。ホストファミリーのみなさまのおかげで楽しい一晩を過ごし、忘れられない思い出をたくさん作ることができました。

8月19日(水)

朝、毎年ご支援いただいている横浜南ロータリークラブのみなさまが到着。竹を割り、そばちょこも作り、流しそうめんの準備をしてくださいました。そんな中、参加者が元気にホームステイから戻ってきました。お昼は一緒に流しそうめんを楽しみ、スイカ割りも。午後は寺子屋コンサート。ロータリークラブの橋本さん、PFJ ボランティアスタッフの安藤さんによるピアノ演奏のあと、笹部益生さん、坂本愛江さん、八木橋恒治さんが、楽しいカントリーミュージックを演奏してくださいました。プログラムの残りもあとわずかと気づいた参加者たちは、演奏を聴きながら、様々な思い出と離れたくない思いが交錯したこともあって、涙を浮かべながら聞き入っていました。最後はロータリークラブのみなさまやスタッフと「ふるさと」を歌いました。

8月20日(木)

午前中は学びのまとめと行動計画作り。小菅村で学んだことをまとめ、村の暮らしが持続可能な社会のモデルであることを確認し、実際にプログラムの後に、自分たちの地域で何ができるのか、グループで話し合い、行動計画として発表しました。その後、一週間前にまいたそばの畑に行きました。元気に芽が出ていて、自分がまいて芽ばえたそばをうれしそうに見ていました。午後は、最後のシェアリング。一人一人に対し、2 週間一緒に過ごす中で深めた絆を感じながら、全員からメッセージを伝え、長時間にわたりました。

8月21日(金)

夜のお礼の会へ向けて、みんなで協力して会場の飾り付け、中東料理作りなど、朝から準備をしました。夜のお礼の会では、ホストファミリー、村の子どもたち、お世話になった村のみなさまが大勢参加してくれました。今年は、イスラエル人、パレスチナ人参加者が日本語で司会。たどたどしい部分もありましたが、なんとか進行できました。参加者が料理した中東料理でおもてなしするとともに、パレスチナの伝統の踊りやイスラエルの子どものダンス、プログラム中みんなで練習したカップダンスなどを披露しました。村の方々へのお礼の言葉を一人一人から伝える場面では、また別れを惜しんで涙も。小菅村での最後の夜を思い出深いものにすることができました。

8月22日(土)

名残惜しそうに、東京に移動、都庁の展望台から東京の風景を眺め、どこまでも都会のビルが続いていることにびっくり。小菅村の手前の奥多摩の山並みも見えました。フェアウェルパーティーでは、プログラムの様子をふりかえるスライドショーの後、参加者一人ずつに修了証を授与しました。スタッフも一緒に、最後の別れを惜しんでいました。

8月23日(日)

イスラエル、パレスチナ参加者帰国。日本の参加者が成田空港まで見送りに行き、別れを惜しんでいました。

関連の活動

 1) 講演会/報告会(2015年11月7日開催)
 2) イスラエル、パレスチナへのスタディーツアー(2016年3月)

参加者からのメッセージ

 
異なる国の人たちと絆を築くことができたことがとてもうれしい。このプログラムで、友情を築くためには言葉が一番重要なものではないということを知った。また、自然と良い関係を作ることが
大切だということも学んだ。さらに人々と伝統との間にもたくさんの絆があることを学んだ。私は、自分に何ができるのか、自分にとって何が大切なのか、など自分自身についても多くのことに気づいた。そして私の人生において、それらがきっと役に立つだろうと思う。(イスラエル人参加者)


小菅村の方々は、本当に自然を大切にしていて、そのことが環境を守るためにとても重要なのだということを学んだ。村の方々は、自然を大切に扱わなければ、また自然を助けなければ、この土地で生活できなくなることを知っている。もし人が平和で持続可能な社会で生活したいのなら、人は自然と共存できるバランスを見いだす必要があるのだと思う。(イスラエル人参加者)


参加者のみんなと一緒に笑い、泣き、踊り、寝て、ここにはたくさんの私たちの思いがある。だから、私たちは家族のようになった。ここで新しい姉妹、お母さんができた。美しい自然、冷たい水が流れる川、その他たくさんのことをここで見つけた。このプログラムには愛、助け合い、与えること、自然、人々、いろいろ素晴らしいものがあった。(パレスチナ人参加者)


素敵な参加者のグループの一員になれ、そして、小菅村で素晴らしいスタッフたちと一緒に過ごすことができてとても嬉しかった。みんなは私の第二の家族だ。毎日、自然や水、その他たくさんのことを学んだ。学んだことを私のコミュニティでも活かしたい。またいつかみんなで会える日がきたらいいなと思う。今度はスタッフとして帰って来たいと思う。(パレスチナ人参加者)


村の方々からたくさんのことを学んだ。私たちは自然を必要としているし、自然もまた私たちを必要としている。村の方々が自然を守る努力をされ、自然がくれるものから様々なものを作り、様々な使い方をされていることを尊敬する。(パレスチナ人参加者)
2週間、本当に有意義な時間を過ごすことができた。2週間で学んだことは、思っていたよりもかなり多く、とても良い経験だった。何よりもイスラエル、パレスチナから来た参加者のみんなと仲良くなれたこと、そこから中東問題が「自分のこと化」されたことが大きな変化だった。また、国際交流ばかりにしか関心が向いてなかったが、里山や自然のことも体験できて、自分の視野が広がったと思う。(日本人参加者)