"絆" KIZUNA プロジェクト 2014 報告


Peace Field Japanは、2014年8月に、"絆" KIZUNAプロジェクトを行いました。三地域の参加者が、持続可能な社会のモデルである里山で共に生活し、地域の人が育んできた暮らし、文化、伝統にふれる体験を共有することで、お互いを受け入れ、絆を築くと共に、持続可能で平和な社会を作るために何ができるのかを一緒に考える場を提供しました。
 
 

プログラム概要

 
 
1) 参加者:
イスラエルの高校生女子4名、指導者1名
パレスチナ(西岸)の高校生女子4名、指導者1名
日本の15才から19才の女子4名

2) 開催地:神奈川県横浜市、小菅村、東京都内

3) プログラム概要:
期 間:8月7日~21日  
場 所:神奈川県横浜市、山梨県小菅村、東京都内
参加者 :イスラエル、日本、パレスチナの15-19才の青少年各4人
主 催:認定特定非営利活動法人Peace Field Japan
助 成:独立行政法人国際交流基金
協 賛: 一般社団法人環境マテリアル推進協議会、横浜南ロータリークラブ、横浜MM21ロータリークラブ、有限会社アオキエアコンディショニング、株式会社いちごホールディングス、津田眼科クリニック、ネタフィムジャパン株式会社
物品協賛:株式会社東あられ本舗、アリサンオーガニックセンター、インド&パキスタンレストラン スルターン、株式会社良品計画、セカンドハーベストジャパン、株式会社はくばく、株式会社マンナンライフ、川崎ロータリークラブ、横浜瀬谷ロータリークラブ
KIZUNAサポーター:山本麻子さん、大圖通子さん、太田和代さん、金久実央さん、NPO法人GIFTHOPE、桜井裕子さん、颯田裕彦さん、佐和貫鈴さん、蕭敬意さん、白川正孝さん、杉浦武胤さん、高木バットシェバ・佳男さん、田中麻紀さん、谷口裕さん、中島大輔さん、成瀬猛さん、長谷川成人さん、深山静子さん、矢田重明さん、吉田修一郎さん

4) 日 程:
8月7日(木)     成田着、自己紹介、オリエンテーションを実施
8月8日(金)   横浜市内の環境スタディーツアー
8月9日(土)   みなとみらいウォークラリー
8月10日(日) 小菅村着、オリエンテーション、共同生活のルール作りの後、茶道体験
8月11日(月) ゲームとダンスでアイスブレーク、小菅村の子どもたちとの交流
8月12日(火) 学生ボランティアスタッフによる里山講座と小菅講座、そばの種をまき
8月13日(水) 源流体験、ホームステイ
8月14日(木) そばうち、そばせんの作成
8月15日(金) 下水処理場、林業廃棄物センターを見学
8月16日(土) マスの串刺し作成、夏祭り参加
8月17日(日) 奈良倉山登山、和食作り体験
8月18日(月) プログラムでの学びのまとめと行動計画作り
8月19日(火) お礼の会(中東料理、踊り)
8月20日(水) 東京に戻り、フェアウェルパーティー
8月21日(木) 両国の参加者、帰国

プログラム内容

 

8月7日(木)

イスラエル、パレスチナの参加者が成田空港に到着。現地情勢の悪化で、現地でのジョイントキャンプにパレスチナ人参加者3人が参加できなかったため、初対面の挨拶を交わしました。日本人参加者も集合し、自己紹介、オリエンテーションを行いました。

8月8日(金)

横浜南ロータリークラブの受け入れで、横浜市内の環境スタディーツアー。トヨタメトロジック株式会社では、説明を伺った後、製造現場を見学させていただき、日本の製造業の技術、環境配慮の取り組みについて学びました。横浜市資源循環局金沢工場では、日本ではゴミを焼却処理しているということに驚いていましたが、市をあげて取り組んでいるゴミ減量の取り組みや、公害を防止する技術など、都市部で発生する大量のゴミ処理について学びました。また、イオン本牧店では、牛乳パックやトレーのリサイクルステーションやゴミを減らすために詰め替えができる商品、マイバッグの推進など、環境を守る取り組みについて説明を受けました。
 

 
8月9日(土)

横浜南ローターアクトのメンバーのみなさんの案内で、「みなとみらいウォークラリー」を行いました。4つのグループに分かれて、事前に準備してくださったしおりをもとに、みなとみらい地区の名所をまわりました。夜は、横浜南ロータリークラブ、国際ロータリー第2590地区第7グループ主催で、ウェルカムパーティーが行われました。ロータリアンのみなさまによる、"花は咲く"の合唱のお返しに、イスラエル人参加者、パレスチナ人参加者が歌を披露しました。ロータリークラブのみなさまと、楽しい交流の機会となりました。

8月10日(日)

いよいよ小菅村へ。寺子屋自然塾に到着すると、前日から準備をしていたたくさんのボランティアスタッフに迎えられました。オリエンテーション、共同生活のルール作りの後、茶道体験。スタッフが浴衣を着てお手前を披露し、正座が大変そうでしたが、羊羹と薄茶をいただきました。”一期一会”と”おもてなし”について説明を受け、人と人が出会いの空間、時間を共有することの意味を感じました。”一期一会”は、プログラムを通してのキーワードとなりました。

8月11日(月)

今年も、毎朝ラジオ体操を行いました。朝食後、みんなでゲームとダンスでアイスブレーク。「フォーチュンクッキー」が今年のテーマダンスとなりました。ハートコミュニケーション講座では、万華鏡をまわして自分が見えたものを出し合い、それぞれ個性があることを感じ、全員の赤ちゃんのころの写真を見ながら、コミュニケーションの意味を考えました。心でコミュニケーションするために大切なことを確認し、プログラムを通して実践していくようにしました。午後は、小菅中学校の体育館で村の子どもたちとビーチボールバレーで交流しました。総当たり戦でゲームをした後、折り鶴にサインしあって持ち帰りました。また、小菅中学校の校内を見学させていただき、日本では、生徒が毎日掃除をしていること、給食をみんなで食べていることにびっくりしていました。

8月12日(火)

午前中は、学生ボランティアスタッフによる里山講座と小菅講座。里山講座では、劇も交え、日本の里山は持続可能なコミュニティのモデルであり、自然と人が共存し、自然の恵みで人の暮らしが成り立っていたこと、里山の様々な機能と価値、社会の変化による里山の荒廃の危機について学びました。小菅講座では、春に行った自主研修以来スキルをあげたボランティアスタッフによって、ニュースのレポート形式による、小菅村の魅力と里山の変化による様々な課題の具体例を学びました。午後は、あいにくのどしゃ降りの中、長作集落散策へ。偶然猿に遭遇し、山からおりてくる動物が農作物を荒らす現状を間近に見ることができました。そして、毎年お世話になっている守重敏夫さん、広子さんご夫婦の畑でそばの種をまきました。納屋の中で蒔き方の説明を受けた後、鍬で畝を作り、種をまき、土をかぶせる、という畑作業は、強まった雨で畑の土もぬかるみ大変でしたが、元気に芽が出るよう、2013年の参加者が蒔いて収穫したそばの実を蒔きました。10月に日本人参加者とボランティアスタッフが収穫し、2015年の参加者につなぎます。心をこめて、畑で野菜を作っていらっしゃる守重さんの思いにもふれました。

8月13(水)

午前中は源流体験。NPO法人多摩源流こすげの鈴木さんと岡本さんに案内していただき、多摩川の源流を歩きました。木もれ日の中水につかり、中東とは違う日本の自然を感じ、急な流れの場所では、お互いに手を差し伸べながら、助け合ってゴールの滝まで行くことができました。最初は何人か躊躇していましたが、仲間の声援のもと、全員が大きな岩から淵に飛び込みました。豊かな森があってこそのきれいな水であること、自然の大切さを学びました。夕方から、ホームステイへ。

8月14日(木)

ホストファミリーのみなさまのおかげで楽しい一晩を過ごし、忘れられない思い出をいっぱいに、元気に戻ってきました。そして、これまで毎年参加者が種をまき、ボランティアスタッフが収穫してつながってきたそばを石臼で挽き、集落の方々に教えていただきながらそば打ちです。昼食は自ら打ったそばと小菅村でとれた野菜の天ぷらでした。おいしいと大満足。次に、布草履作りを体験しました。草履作りという伝統の技と現代のリサイクルを同時に学ぶ体験で、それぞれが古くなって不要になったTシャツを持って来て、それを割いて草履を編みました。次は、そばせん作り体験です。型に丸めた生地を入れ、リズムにあわせて型を回しながら焼く作業です。観音堂の焼き印を押し、思い思いに模様をつけたパッケージに入れ、家族へのお土産にしました。そばを通じて食と文化、自然のつながりを体験した一日でした。

8月15日(金)

多摩川源流の村である小菅村の自然を守る取り組みについて学びました。小菅村役場の森嶋さんの案内で、まず、雄滝へ。緑の美しさに感嘆していました。東京都の水源林となっている森では、森の手入れの仕方、高齢化で森の手入れが難しいこと、東京からボランティアが間伐の手伝いに来ていることなどの説明を受け、下流域に水を提供するために必要な森の管理の大切さを学びました。また、小菅養魚場で、きれいな水があることで成り立っているヤマメやマスの養殖について説明を受け、川の水をひいて魚を育てた後、水をきれいにしてから川にもどしていることを伺いました。また、上流の村の責任として、下水を処理してから川にもどすための下水処理場、村の全家庭から生ゴミを回収して堆肥にしている林業廃棄物センターを見学しました。実際に、各戸から回収してきた生ゴミとおが粉をフォークリフトでかくはん機に入れる作業、導入したばかりの機械で熱を加える作業、できた堆肥の袋詰め作業など、それぞれの行程について詳しく説明していただきました。堆肥になるまでの作業を一人で担当されていることに、参加者は驚いていました。最後は守重さんの森で、間伐体験を行い、のこぎりに四苦八苦しながらも、協力して倒しました。切ったばかりのヒノキの香と、しっとりした切り口に驚いていました。小菅村の自然を守る取り組みの現場を見ることができ、参加者にとって貴重な学びの場となりました。夕食は巻き寿司作り体験。思い思いに具を入れて、細巻きを作りました。

8月16日(土)

午前中は、新聞紙で紙袋を作りました。参加者は、地域での環境の活動に参加しているため、レジ袋が環境問題となっているパレスチナやイスラエルで、ゴミ減量につながる試みになることから、真剣に取組み、大小二つの袋を作りました。塩焼きにするために、大騒ぎをしながらマスを串刺しにした後、浴衣を着て夏祭り。残念ながら夕立が降り、外で行うことはできませんでしたが、集落の方が用意してくださった、地元の野菜を使っての郷土食やマスの塩焼きをおいしくいただき、スタッフによる出し物を楽しみました。生まれて初めて魚を食べたという参加者も。

8月17日(日)

守重敏夫さんの案内で恒例の標高1349mの奈良倉山登山です。それほど暑くない日だったので、元気に頂上まで登りきることができました。霧が広がる神秘的な森を歩き、中東では味わえない自然を満喫しました。予定した時間よりも早く下山。夕食は、世界無形文化遺産にも登録された「和食」作り体験。鰹節と昆布からの出汁の取り方を学び、鶏の照り焼き、卵焼き、野菜のゴマ和え、酢の物、すまし汁を作りました。

8月18日(月)

午前中はプログラムでの学びのまとめと行動計画作り。小菅村で学んだことをまとめ、村の暮らしが持続可能な社会の一つのモデルであることを確認し、プログラムの後に、自分たちの地域で何ができるのか、グループで話し合い、行動計画として発表しました。その後、一週間前にまいたそばの畑に行きました。どしゃ降りの中まいたのにもかかわらず、元気に芽が出ていて、自分がまいた畝の芽をうれしそうに見ていました。午後は、最後のシェアリングを予定していましたが、雨が降りだし、夏に雨が降らない中東から来た参加者たちは、雨にうたれながらのどろんこ遊びに夢中。シャワーを浴びてから、シェアリングとなりました。2週間一緒に過ごす中で深めた絆を感じながら、一人一人に対し、それぞれから相手への言葉を送り、3時間以上にもなりました。

8月19日(火)

小菅での最後の1日。夜のお礼の会へ向けて、みんなで協力して会場の飾り付け、中東料理作りなど、朝から準備をしました。夜のお礼の会では、ホストファミリー、村の子どもたち、お世話になった村のみなさまが大勢参加してくれました。参加者が料理した中東料理でおもてなしするとともに、里山講座でボランティアスタッフが英訳して歌った「手のひらを太陽に」や、パレスチナの伝統の踊りを、イスラエル人参加者も一緒になって披露しました。全員で考えた村の方へのお礼の言葉を、英語、日本語、ヘブライ語、アラビア語で読み上げました。

8月20日(水)

小菅村を離れたくないと口々に言いながら、お世話になった村の方々に見送っていただき東京に移動、原宿歩き。フェアウェルパーティーでは、プログラムの様子をふりかえるスライドショーの後、参加者一人ずつに修了証を授与しました。ボランティアスタッフも一緒に、最後の別れを惜しんでいました。

8月21日(木)

イスラエルとパレスチナ参加者が帰国。日本人参加者が成田空港まで見送りに行き、みんなで別れを惜しんでいました。

関連の活動

 1) 講演会/報告会(2014年10月21日開催)
 
 2) イスラエル、パレスチナへのスタディーツアー(2015年3月実施)

参加者からのメッセージ

ここで関わった多くの人たちと絆を築けたと思うし、自分の周りのものとの様々な絆を感じた。自分は、自然とも深くつながっているということもわかった。このプログラムのおかげで、自然の大きな価値についても気づけたと思う。(パレスチナ人参加者)
小菅の人たちと自然、環境の絆を見ることができた。また暮らしている場所と文化とのつながりも感じた。そして異なる場所から集まり、異なる文化を持つ、他の参加者たちとの素晴らしいつながりを築くことができた。(イスラエル人参加者)


今の私は、今までの私とは違います。勇気をありがとうございました。(パレスチナ人参加者)


これからも一期一会と”もったいない”を実践していきます。(イスラエル人参加者)


みなさんのサポートのおかげで、なんでもやろうと思えばできることを学びました。これから地域で、まわりの人たちが笑顔になるようなプロジェクトを始めます。(イスラエル人参加者)


自然を大事にし、お互いに気にかけ合いながら毎日の生活をしている小菅村の方々から多くを学びました。(パレスチナ人参加者)


小菅で一番印象的だったのは、人と自然の絆。自然を大切にしている様子はとても美しいし、そのように大切にされている自然だからこそ、その中にいることで元気になれました。(イスラエル人参加者)


異なる文化から来た私たちの間に、強い絆を築いただけでなく、環境を良くしたいと思う、共通の目的をもつすべての人たちをつなげたと思う。(パレスチナ人参加者)


2週間の絆プロジェクトは、小さく、楽しく、そして時には、とても考えさせられる、深いものだった。体験したすべてを忘れないようにしたい。参加者全員と、また、一緒に過ごした全員との絆を感じることができた。(イスラエル人参加者)


パレスチナ問題は、私にとっては単なる国際問題の一つではなく、大事な友達を隔てる大きな壁です。友達が、自由に会える日が来るように、自分にできることをしていきたいです。(日本人参加者)